YAMASHITACHOU CRONOMETRO

SAUCE DEVELOPMENT 所属 TTスペシャリスト見習いのBlog

2days Race in 木島平村 - SAUCE DEVELOPMENT所属のルーラーが見た景色

エースの自覚

僕は、個人競技では剣道、団体競技では野球にバスケと小中高の間に経験している。
どの競技もレギュラーと非レギュラーの間に横たわる溝は大きくて、何度かそのギャップに涙した事もある。
逆に先輩を差し置いてエースを任される事もあった。
だけれども、当時の事をつぶさに思い出しても、今回の我がチームのエース程に自覚や覚悟があっただろうか?と考えずにはいられない。

マチュアレースでルーラーは存在し得るのか?

エースを牽引し、人知れず仕事を終え、集団から千切れ完走を目指す。
プロレースではお馴染みの光景だけれども、日本のアマチュアレースではなかなかお目に掛かる事は少ないんじゃないかと思う。
色んな理由があると思うけれども…
仕事でもなんでも無い上に、それなりのエントリーフィーや遠征費を払い、更には家庭内の諸々の調整を掛けて参加しているレースで、「誰かの為に犠牲になる」だけの理由を見出せないのが大半じゃないだろうか?
それでも僕みたいなルーラータイプはプロの「それ」を「いつかは」と夢見ている。

2days Race in 木島平村 2017

木島平村のレースは平坦寄りとは言えコーナーが多くインターバル地獄になる事が予想できていた。
そんな中、僕は直前のターゲットレースだったAACAのTTレースがあった関係でひたすらベースアップトレーニングに励んでいたので、着を狙うのはとてもじゃないが難しいだろうなと考えていた。
となると、若手中心の我がチームでやる事は一つ。
「一番思いが強くて速いヤツをアシストする」
そうレース前に腹を決めていた。

初日は2回のレースがあり、1つ目が3.2kmのコースを2周するタイムトライアルレース。
本来自分の得意分野ではあるのだけれども、前述通りアシストに徹するのを優先し脚切りされない程度のほどほど加減のつもりでフィニッシュ。
結果、全体の半分位の順位だったのでTTバイク持ち込んで全力で走ってたら…とか一瞬考えたのは内緒。

f:id:shinichiarimasu:20170522231408j:plain(真剣な表情してるけど、脚切られない程度にどう纏めるか考えてる時だったり…)

この時点で、チームで一番持ちタイムが良いのはU23対象のマサト。
普段から練習する事が多い彼のやる気や根性は良く知っていたし、このレースに掛ける強い想いは理解していたから「時が来たら捨て身でアシストしよう」と考えていた。

レーススタート

プロチームも複数出場し全体のレベルが非常に高い事で知られている当該レース。
今回も御多分に漏れず序盤の攻防を経て有力走者が逃げ集団を形成し僕らアマチュアレーサーは手も足も出ない状態。
逃げは決まったものの序盤はけっこうなペースで進む上に、僕みたいなコーナー処理下手っぴは集団後方でインターバルに苦しみどんどんと人数を減らしていく…

タイムトライアルスペシャリストの集い

実は今回の木島平、名の知れたタイムトライアルスペシャリストがたくさん集まっていた。
先日の埼玉TT上位、AACA表彰台な方等…
いずれも超ベテランで、僕からしたら尊敬する先輩方。
そして僕と決定的に違うのは「TTスペシャリストだけどロードレースも持ち味活かしながら上手く走れる」という点。
残念ながら僕はこの辺りがまだまだなので精進せねばなと思い知らされたレースでもあった。

オールアウト

閑話休題
レースは逃げができ、散発的にペースの上げ下げはあるものの差を縮めるには至らず終盤に突入。
序盤に体調不良でドロップしたチームメイトを除いて4/5の状態なSAUCE DEVELOPMENT。
タイミングを見計らってチームで固まれる位置までポジションを上げる。

補給周回を挟んで数名の逃げが決まり、20秒無い位の差ができている。
直感でこの逃げは上手く利用したいと考えていると、少し前にいるマサト&リツオコンビも同じ事を考え会話している様だったので二人に合図を送りつつポジションを上げる。
マサトが気付いたので一気にペースを上げて集団最前列まで飛び出る!
理想の展開としては、マサトを逃げ集団に単騎で送り込む事。
ただ、それができなくても、緩んでいた集団の後方にいたU23対象、つまりマサトのライバル達をインターバル地獄に引き込んでダメージを与える事が、このコースならできる。
後の事は考えず只ひたすら全力で踏んで踏んで踏んでもがき続け下りコーナー辺りで力尽きた。
左に避けてマサトを見送ると、速いんだかゆっくりなんだかわからないスピード感で集団が僕の右側を駆け抜けていく。
とても時間がゆっくり流れる気がした。
これはきっと、全力を出し尽くしたアシストだけが見る事のできる美しい風景なんだと思う。

おわりに

いつもとは少し違う切り口でのレースレポート。
読んでくれた人にロードレースの愉しさの一片でも伝わったのなら僥倖です。

AACA 日本アマチュアグランプリ個人タイムトライアル - 総合5位

f:id:shinichiarimasu:20170510020643j:plain撮影 youkan_0045

日本アマチュアグランプリ個人タイムトライアル

プロの参戦お断り!アマチュアのための日本一決定戦!

5月7日、長良川サービスセンター前特設コースにて開催決定!

非公式アマチュア選手のための日本一決定戦を開催します!

3月のある日、魅惑的なキャッチコピーと共に告知されたタイムトライアルレース。
それは自分みたいなアマチュアタイムトライアルマニアには堪らない響きだった。

日本の個人タイムトライアルレース事情

そもそも日本はアマチュアが参加できるタイムトライアルレースの数がそう多く無い。
いや、少ない。

メジャー所な日本のTTレースを格式順に(あくまで個人的観点)で並べると、

全日本選手権ITT ⇒ JPT渡良瀬(タイムトライアルチャンピオンシップ) ⇒ 埼玉TT ≒ AACAITT ≒ 茂庭ITT ⇒ その他

といった具合。
あとは無くなっちゃったけどFunride主催で開催されていたタイムトライアルジャパン。(復活しないかな…)
最近は、関西中部のAACA、関東の埼玉TT、東北の茂庭ってな感じの棲み分け。
埼玉TTと茂庭は被ってる面子が多いかもしれないけど。

会場へ

始発の新幹線に飛び乗り、名古屋までのぞみ、乗り換えてこだまで岐阜羽島へ。
(車両最後尾がパッキングした自転車とホイール入れ込めるのでオススメ)
ロッカーに輪行道具を詰め込みTTバイクを組み立てる。
試走は一度はしておきたかったので今回はタクシーで長良川沿いの会場まで18km程。
6000円位だったかな?
この日は半端無いレベルで風が強く、ホームストレートが基本向かい風、バックストレートが追い風の状況。

レース展望

下馬評ではVC福岡サイクルフリーダムの設楽選手と、現王者・筧五郎選手が優勝候補。
筧選手は軽量級ながらもエアロフォームの煮詰め具合、そして魂の走りが本当に凄い。

優勝タイムは27分前半台のタイムで勝負が決まると思われたが…

レースレポート

片道2.5kmを180°ターンで往復するシンプルなコースを4周、20kmで争われる個人タイムトライアルレース。(実は20km走れる個人TTはめっちゃ貴重)

試走時と変わらぬ暴風の中、出走30秒前にクリートをキャッチし係りの人に支えて貰う。
しかし、自分が重いせいなのかなんなのか、真っ直ぐ支えてくれずめっちゃ怖い。
斜めってます!とアピールするも戻せず、結局変にバランスとりながらの出走。

出走直後にサイコン見ると、アドレナリン天国状態が故に、ターゲット出力よりだいぶ上振れたパワーが出てる。
ここは個人TTあるあるなので意識して抑え目に修正。

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兎に角風が強いのでバイクの制御がなかなかシンドイ。
時折横に近い風も吹き付けるのでなかなか気が抜けない。
何より上半身に力が入ってしまい無駄に消耗している…
スピードは40km/hいくかどうかという状況

折り返し180°ターンは緩いので、DHバー握ったままで行きたいが、この風だとコーナー中に変な風がきたら転げそうなので安牌を取ってハンドル部持ちながらでクリア。

折り返すと追い風で、直線は平気で50km/h後半台が出る。
2周目最終コーナー少し前では60km/hが出るほどだった。

それなりに長丁場なので2周目と3周目を我慢しようと思っていたけれども、結果としては2周目にちょっと頑張り過ぎたので3周目4周目が気持ちタレ気味に…

片道2.5kmという事もあってけっこうな人数を抜いていき、2分前を走るBMCのザックさんをターゲットにじりじりと詰める。

前述の通り2周目で頑張ったツケを払う形で3周目がめちゃめちゃ辛い。
ひたすら頭の中でポジティブな言葉を思い浮かべてはやり過ごす。
コーナーが来ると辛さから逃げたい気持ちが働いて少し手前からブレーキングし出す。
弱い…(メンタルが)

途中、たくさん写真撮って貰ってるなーと思うも鼻水と汗が全開で、内心「酷い顔やから撮らんでくれー!」となる。
最近追い込むと鼻水が凄い出るんですけどなんなんですかね…
トーマスデヘントやトニーマルティンも中々凄いけどあれ並みやと思う。

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そして最終周回。
想定だと往路で追い込んでギアを1枚掛けたかったんだけれどもそれどころじゃなかった。
維持するのが精一杯。

復路のバックストレートはなんとか気合い入れて頑張り、ゴール前の登りはダンシングで踏み切る。

酸素が欠乏して朦朧とした状態でサイコンを見るとなんとか27分台。
勝負に全く絡めないってな事は無さそうか…と少し安堵。
同じくゴールしたザックさんに「Nice Run」とすれ違いざまに声を掛けて貰えた。
すいません返事しようと思ったら声出ませんでした。

レースを終えて

結果はタイトルに書いた通り総合5位
マチュアTTスペシャリスト決定戦!と銘打ったレースで5位なら見ようによっては悪く無い結果なのかもしれないけど、やっぱり悔しい思いの方が圧倒的に強い。
今以上に質の高いトレーニングを積んでパワーアップし、JPTの非専業プロ(の中のトップTTer)と競れるレベルになる事を目標に引き続き頑張っていきたいと思う。

同日開催の埼玉TTについても考える

こんな妄想しても意味は無いんだけれども… と前置きして。
今回のアマチュアグランプリITTは、距離20km/で180°ターンが8回に爆風という条件で27分48秒、時速43.2km/h という成績。
対して、埼玉TTは距離14kmで180°ターン1回、そしてリザルトがこんな感じ。
もしかすると、埼玉TT走ってたとしてもやっぱり同じ位の順位だったかもなーという妄想。
そういった意味ではAACAで勝った設楽選手と埼玉TTで勝った中村選手が同じレースで走ったらどっちが勝ってたのだろう?とか、もっと言えばAACAと埼玉TTが別日開催だったらもっと楽しかっただろうし、本当の意味でアマチュア最強決定戦であり、マチュアTTスペシャリスト格付け戦足り得たんだろうなと。

次回(来年?)は巧く擦り合わせて別日開催になる事を期待しています。

緩いお誘い

もし、これ見てくれた東京千葉埼玉神奈川辺りのTT好きの皆様、是非8月に開催予定のAACA個人TT一緒に出ましょう!

筑波8耐(2017春)総合優勝&2位 レース記録

誘いはある日突然に

東海道線で新橋から横浜へ向かって走っていると、練習仲間のKMさんからメッセージが飛んできた。
久し振りの練習のお誘いやろか?と思って開いてみると

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想定外のメッセージにまず驚いた。
同時にめっちゃテンション上がったのも正直なところ。
KMさん自身有名なホビーレーサーだし、他メンバーを聴いてみても凄い人ばかり。
その彼らとチーム組んで走れるのはとても楽しそうだし間違いなく勉強になる。
そして何よりライバルチームがオリンピック選手含むトライアスリートチームという、超非日常感。
絶対自分一人では味わえない経験になるだろうな、と思って諸々調整して参加させて貰う事に。

筑波8耐とは?

関西方面の方にもたくさん読んで頂いているのでちょっと説明。

茨城県つくば市にある、筑波サーキットの1周約2kmコースをチームで8時間走り、周回数を争うレース(同一周回数で最終周回に入った際は先着順となる)
一番の特徴は8時間走る中で15回のライダーチェンジが必須な点。
1チーム3~6人のメンバーで構成されているので一人辺り5回~3回走る事になる。

交代の際はバックストレート側にあるチェンジ用レーンから入り、ピットゾーンでは完全に徐行し足首に巻くセンサーを次走に渡し、これまた徐行しながらピットゾーンを出てコース復帰といった流れ。

エンデューロを走った事がある人ならわかりやすいけれども、集団からドロップすると復帰するのは相当な出力で踏み続けないといけない。
選手交代でピットに入るという事は集団から一度ドロップした上、諸々のタイムロスにより相当なビハインドになる。

交代回数が明記されていないエンデューロだと交代しない方が有利だったりするが、このレースはそうもいかない。
優勝する為には戦略的にこの15回にも及ぶ選手交代をこなさなければならないのだ!

打倒カレー屋!

レース会場には渋滞にはまってだいぶ遅くに到着。
ささっと試走に行ってとても走り易く好きなコースだなと、いい感触。
そして帰って来て談笑しているとチームメイトが「カレー屋が」「サーラが」等々謎の暗号ちょいちょい話しに盛り込んでくる。
なんのこっちゃい?と思いながらも話し続けていると「カレー屋はヤバい」「最後までカレー屋と勝負だろう」と…
「オリンピック選手チームがライバルやなかったんか?!」と内心めっちゃ驚いていたが、どうやらオリンピアトライアスリート御用達のインドカレー屋、サーラというのがチーム母体らしい(違ってたらごめんなさい)

ピットとは別のテントゾーンがあって、そこでの自分達のスペースの真横が正にライバルチームのスペース!
ちらちら見ると「カレーが入った巨大な寸胴鍋が2つある」
そらカレー屋なんだから当たり前なんだが、超本格的な鍋がドカンと置いてあるテントスペースってのは初めて見たから本当に度肝を抜かれた。
何より一番ヤバかったのは途中から美味しそうなカレーの匂いが漂ってきて腹が減る事だ。
場外でも勝負は始まっている…

平和な序盤

そんなこんなで8時間にも及ぶ耐久レースは始まった。
我々は2チーム12名での参戦となり、Aチームは前回チャンピオンという事で集団最前列から、Bチームは相当後ろからのスタートで、Bチーム第一走者YNG先輩は2周掛けて先頭まで出る大変な思いをしたそうだ。
体調も悪くだいぶナーバスだったYNG先輩がスタートライン遥か後方に並ばされ「この世の終わりを見た」かの様な表情になっていたのは、すいません、同じくチームメンバーでエーススプリンターのKD少年、HGSさんと共に爆笑して見ていました。

第一走者は40分~1時間程で、ある程度集団人数を減らした所でメンバーチェンジ。
次走はJPTで走るモノホンのTTスペシャリストZKさんと魂の走り!AYさん。
前述の通り、集団からはドロップしているわけなのでコースに出た瞬間から兎に角全力で追い駆ける!
僕の手元計測だと先頭集団は30秒先を行っている。
こりゃー追っ掛けるのなかなかシンドイなーと見ていると1周10秒位でゴリゴリと追い付いていく。
速い。
実力者のAYさんが死にそうな顔してピットに戻ってきたのがZKさんの曳きの半端無さを物語る。

精鋭たちによる序盤の快走劇により、あっという間に優勝候補チームが絞られていく。
とは言ってももちろんまだまだ気を抜ける状態では無い。
メンバーチェンジの枷は我々にも等しく伸し掛かってくるからだ。

とうとう自分の番、チームとしては第5走者目がやってきた。
ちょっと緊張しつつも前走メンバーが集団を減らし、マーク対象を絞ってくれているので非常に走り易い。
2チーム同時にメンバーチェンジなので、相方になるTMさんと二言三言話し、足首センサーを受け取りいざ出走。
比較的あっさり先頭集団と合流し順調に周回をこなす。
だいたい1周2分50秒後半から3分前半位、平均時速で恐らく42km/h~44km/h位。
結局、第一走は特筆する事がなさすぎなレベルで終了し、テントスペースへ帰ってS監督お手製の鴨肉サンドイッチを食す。旨い。

この時点ではコムリン、サイクルフリーダム辺りがライバルとして競っている感じ。
カレー屋の脅威はまだこの時点では知る由もない。

1順目:23分 / AvgSpeed41.3km/h / AvgNP296w / AvgWatt288w

頭のネジ飛ばして楽しかった中盤

「このサーキットの中で俺が一番速ええって思いながら走る」
とはチームメイトのFJさんの名言である。
FJさんとMHさんは第三走メンバーで、それぞれテンション超高めと寡黙な人コンビでめっちゃ好対照。

2順目の自分の出番がやってきたものの、良い感じに乗っかれそうな集団が全然見つからずTMさんと二人旅を続ける。
その内ちょっと前に小集団を見つけたので追い駆けようかなと思って二人で回しているとTMさんが「ちょっと前に追い付くの厳しそうですね」との事だったので、まだ自分はだいぶ脚が元気だったのもあり、先頭固定で370w目安で踏んでいく事に。
そしたらだんだん楽しくなってきて完全にネジがどっかに飛んでいき、そのままの出力で3周弱先頭固定で曳き続ける。
アドレナリンが出過ぎてるのも間違いなくあるけど、集団でこれより低い出力で踏んでるより体感的にだいぶ楽だった。
そんなこんなでトータル7周ばかししたところで戻る様S監督から指示があったので戻る事に。

そしてテントスペースに戻って出たのが上の名言。
確かにアホになったら楽しく走れるな!
(この後、FJさんはライバルチームの選手を頭脳とスピードで引き千切りめっちゃご満悦そうで楽しそうでした)

2順目:18分 / AvgSpeed42.4km/h / AvgNP334w / AvgWatt324w

最終ボス、カレー屋

ピット回数の調整等で少しの不安はあったものの、コムリンやサイクルフリーダムを要所要所で引き離し、1LAP差を付けるまでになっていた終盤。
しかし、ここまで3分近い差があったカレー屋チームがなんと2分差、1分差まで詰めよってきたていた。
恐ろしい事にこれは「終盤で集団が全く機能しない」時間帯の出来事である。
個人の走力だけでここまで詰めてきているという事、オリンピック選手恐るべし。

そして自分の3順目がやってきた。
今の所カレー屋とは1分差、つまり自分達の約1分後ろを走っているという事。
結構なプレッシャーの中、自分とTMさんは集団を見付けてはまだ走れそうな人に声を掛けてローテーで走る事を提案しながら走る。
自分達は当然優勝争いをしているが、同時に別カテゴリや総合3位以下争いをしているチームもあるから、思惑が一致し一時的な共闘体制を組む事ができる。
これがチームエンデューロの面白い所。
しかし、やはりもう6時間近く走っているので脚が合わなかったり、変に力んでローテから飛び出してしまう人も多く、その穴埋めや声掛け、整理をしながら我慢の走りが続く。

なんとか1分前後のまま差を保ちつつ10周程。
S監督から「はい、じゃあ集団千切って帰ってきて」と有難いお言葉を頂き二人で死にそうになるまで踏んでピットに戻る。
ピットでタイムマネージしているサポートメンバーの女性人から状況を聴いたりラップ確認をして一度テントに戻る。
(8時間もの間立ちっぱなしでタイムマネージメントをしてくれて本当にありがとうございます!)

最後から2走目のORさん、KMさん。
二人とも幾度となく様々なレースで優勝経験を重ねている超ベテラン。
ある意味、チームの精神的な支柱。
その二人がコースをハイスピードで走り、その後ろからカレー屋チームが追い駆ける。
一進一退の手に汗握る攻防がその後数十分続いた…

3順目:32分 / AvgSpeed41.2km/h / AvgNP300w / AvgWatt292w

勝負の時

ピットクローズ(その時間を過ぎると一切の選手交代ができなくなる時間)30分前、僕らのチーム最終走者KD君、HGSさんがピット前にスタンバイ。
雲が立ち込めて辺りは暗くなり、にわかに風も強くなってきた。
ここまでの展開で、勝敗の行方は「スプリント勝負」か「カレー屋チームの独走」どちらかになる事がほぼ確定。
つまり「絶対に独走を許さずスプリントで倒せ」が二人に課せられた至上命題

選手交代等に擁す時間を勘案するとほとんど秒差が無い状態だ。
当然、スプリンター二人に掛かる重圧は相当なモノだったはず。
走者以外のメンバーも皆一様にピリピリした空気の中、コース上のORさんKMさんの走りを見守る。

ピットクローズ10分前、S監督が動いた。
走者2人をピットに呼び戻す指示を無線で飛ばす。
ピット到着まで1分… 30秒… 見えた。
迅速に、でも丁寧に足首のセンサーをKMさんからKD君に付け替える役を終え、見送る。
すると、KD君がピットレーンを出た瞬間全力でかっ飛んで行く姿が!
なんと、我々のこのメンバーチェンジのタイミングに、ライバルチームの最終走者であり、現役オリンピックトライアスリートがホームストレートでアタックを掛け、KD君HGSさんをを置き去りにし独走に持ち込もうとしていた!(自分はこの時KMさんの足首センサーをKD君に付ける役をしていたのでコース上の状況把握ができていなかった)

自分達が考えうる中で凡そ一番最悪な展開になるかならないかの瀬戸際!
その最中、なんとHGSさんが痛恨のクリートキャッチミス!
仮に独走は免れたとしても、KD君とオリンピアンの1対1は手札が一枚完全に落ちる事になり絶対に避けたい!
なんとかHGSさんが前2人に追い付く事を願った。

残り時間約30分。
KD君はオリンピアンの度重なるアタックに食らい付いている。
HGSさんは集団を引き連れ必死の形相で2人を追い駆ける。
そして二人の粘りが奇跡を産んだ!
なんとホームストレートをオリンピアン、KD君、HGSさんのトレインが通過!
どうやら度重なるアタックでも引き千切れないKD君の逆襲を嫌ったのかオリンピアンがスピードを落とし牽制を始め、そこへ、諦めなかったHGSさんが合流した様だった。
HGSさんとは、レースや練習でご一緒させて貰っているのだけれども、本当に凄まじい根性で諦めない漢!流石です。

こうなってくると、ロードレーサー集団である我々が完全に主導権を握った状態。
その中でも飛びっきりにスプリントに長けたエーススプリンター2名がコースを走っているのだから。
独走を是としてその圧倒的なフィジカルで我々チームを葬り去りたいトライアスロンオリンピアン。
でもこれはロードレース。
我々チームの2人がエンデュランス能力で劣るとしても、ゴールラインを一番速く超えさえすれば良い。

その後も何度もアタックが掛かり、それに二人が対応し、大きくなる集団を捌きながらタイムリミットの18時が迫る。

そして最終周回、ホームストレートを超え、勝負には絡んでいないチームの選手が集団の先頭に立ちスピードを引き上げ第一コーナーで降りた時、オリンピアンの最後の攻撃が始まった!
先頭に立ち凄まじいスピードでアタックを続けるオリンピアン。
やはり食らい付く2人。
しかし最後の攻撃も決定打にはならず、ホームストレートでのスプリント勝負!
最終コーナーを曲がり集団が小さく見えた!
会場のテンションは最高潮で大歓声があちこちから鳴り響く!
迫るゴールライン、集団からKD君が凄まじい加速力で飛び抜け、誰も寄せ付ける事なくゴール!
そしてHGSさんもしっかり2着を取り、この瞬間に完全勝利が確定!
ピットの屋上でメンバーと歓喜の雄たけびを挙げ抱き合った。
もう皆テンションメーター振り切れていたのは言うまでも無い。

レースを終えて

なんて感動的でスペクタクルなレースなんだろうと。
色んなレースに出てきたけれどもこんなにも喜びが爆発したのは初めてでした。
こんなにも素晴らしい体験が出来て本当に良かったです。
誘って頂いたKMさん始めチームメンバーの皆様、裏で支えてくれたピットクルーの皆様、そしてレースで戦ってくれたライバルチームの皆様、本当にありがとうございました。
そしてまた機会があれば是非宜しくお願い致します。

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(お写真お借りしました / 3位チームはなぜかメンバーが全員表彰台には来なかった)