LEOMO TYPE-R ファーストインプレッション
はじめに
そもそもTYPE-Rとは何でしょう?
従来、ロードバイクの乗車フォーム・ペダリングフォーム改善に対するアプローチは、
- 熟練者の感覚を言語化したアドバイスを取り入れる方法(ペダリングはバンといってスッと抜くんだ!のような表現を指す)
- 専用の施設で高価な測定装置を用い、専任の担当者によるコンサルティングサービスを受ける
大きく分けて2パターン(だと思います) いずれも優れたメリットがある反面、
- 抽象的な表現の理解が難しかったり、受け手によって解釈が変わる、再現性が低い
- データを基にしたPDCAは日々のデータ取得と変化の突合せであるのに対し、費用が高額になる事や施設への頻繁な往訪が難しい(※勤め人視点で見て)
上記の様な課題があります。
そしてこの課題解決の一つの答えがLEOMOのTYPE-Rだと僕は理解していて、具体的なメリットを列挙すると
- 体の動きの定量化 → 感覚値ベースの改善アプローチからの進化
- 室内だけではなく屋外でも計測可能 → 実競技に近い環境でもロギング可能に
- 日々のトレーニングをロギング → 時系列での変化の発見が可能となり、中長期的な改善アプローチも容易かつ正確に行えるように
- Webアプリベースのビジュアライゼーションと共有機能 → 集合知形成によるパフォーマンス・フォーム改善アプローチの高度化、コーチとの二人三脚アプローチの高度化
なんとなくTYPE-Rのイメージはつきましたか? 続いてどんなデータが指標化され、どんなインサイトが得られるのかを紹介します。
TYPE-Rでビジュアライゼーションされたログから得られるインサイト
現在公式のWebアプリ上(https://app.leomo.io)で指標としてビジュアライズされているのは(各所の記載を取り纏めて、意訳も入れつつリスト化 ※間違ってたら公式サイドの見解頂けるとありがたいです)
Dead Spot Score:左右のペダリングサイクルに沿ってペダル速度が滑らかでない大きさと位置を特定
- Dead Spot が現れる場合は、ペダリング動作が最適ではない可能性があります
- 値は0が最良で高くなるにつれスムーズでないペダリングと定義されています
Foot Angular Range:ペダリング中のヒールアップ及びヒールダウンの動きの角度範囲を表します
- 足の最大角度(かかとが一番高い位置にある時の角度)から最低角度(かかとが一番低い位置にある時の角度)を減算することで算出されます
- この角度が大きい時、9〜12時の段階でかかと位置が高く踏み始めが遅くなり、12〜6時の間にアンクリングが多くなる
- 値が小さいほど(角度範囲が狭いほど)、足からペダルにパワーが伝わりやすいと言えます
- 50°が一般的な角度範囲で65°以上は広めの角度範囲
Foot Angular Range (Q1):踏み込みを開始するペダル位置12時〜3時の間でどれだけヒールダウンしたかを角度で表します(上記Foot Angular Rangeの踏み込み部分の抜き出し)
- 算出式は2.のFARの12時~3時の間を抽出(なのでQ1)
- この角度が大きい状態はいわゆる「踏み始めが遅い」と言える
- 30°以上は広めの角度範囲
Leg Angular Range:大腿がペダリング中に上下に動く角度範囲を測定します
- ふとももの最大角度(一番高い位置にある時の角度)から最低角度(一番低い位置にある時の角度)を減算することで算出されます
- 身体稼動に無理が無い範疇でこの角度を最大化する事を目指すべきです(ここはちょっと?がある)
- 45°は低めの可動範囲、50°は通常の可動範囲、60°は大き目の可動範囲
Pelvic Angle:骨盤が地面に対してどれだけ傾いているかを測定
Pelvic Rotation:骨盤の上下軸(背骨軸)を中心とした回転運動の大きさを測定
Pelvic Rock:骨盤の前後軸を中心とした回転運動の大きさを測定
の7つ。 まだ手探りでインサイトを探している段階ですが、非常に有用な指標群です。 (5~7の骨盤関連指標はまだ深堀りできていないので後日追記予定)
さらに上記指標以外で「1. Dead Spot Score」を深堀する為の2つのビジュアライゼーションが用意されています。
- Pedal Stroke Intelligence(PSI)
Pedal Stroke Intelligence(PSI)は、DSS がパワーとケイデンスの影響をどのように受けているかを表示したもので、PSI 上の各ドットは、Dead Spot が発生したポイントと、その時のパワーとケイデンスを色や位置で表しています
PCD(Power, Cadence, DSS)マップ
- 様々なパワーとケイデンスの組み合わせ別に発生した Dead Spot の発生頻度を表示したものです
- 色:Dead Spot の発生頻度 → 赤色 = 高い頻度 緑色 = 低い頻度
- 濃度:パワーとケイデンスの組み合わせの使用回数 → 薄い = 使用回数が少ない 濃い = 使用回数が多い
- 各セルの上にカーソルを置くと、上記の値の詳細(発生数と当該のパワーとケイデンスの組み合わせの使用回数)が表示されます
Foot Angular Range(Q1)を活用したペダリング修正
それでは実際にTYPE-Rを活用してペダリング改善を行った例を1つ紹介します。
ローラーで普段のメニューをこなし、TYPE-Rで現状を記録し、Foot Angular Range(Q1)の値を見てみると、左が35.6°、右が34.1°とやや大き目の確度範囲だとわかります。
つまりやや踏み遅れていると仮説を立てる事ができるので、12時辺りのかかと角度をやや起こし、踏み始めの力の掛かりを速めるペダリングを試してみます。 すると、仮説通りFAR(Q1)の確度範囲は減少しました。
従来より速めのタイミングから入力が開始される事で、より長い時間入力し続けられるペダリングが実現したと言えます。
パイオニアペダリングモニタとの違いについて
知人から「ペダリングモニターとは違うの?」と聴かれたのでFAR(Q1)に近い概念であるベクトル表示と比べてみました。 (比較の為に検証データは上記FAR(Q1)の検証のデータと同じ部分を抜き出しています。)
旧ペダリング
新ペダリング
ぱっと見では旧ペダリングと新ペダリングの差の把握は難しいですね。 これはデータビジュアライゼーションの考え方が違う事に由来していて、どちらが優れているとは言い辛いところではあるものの、ペダリングフォーム(踏み遅れ)改善という観点では「角度」という数値データが見える事により、TYPE-Rの方がより実用的だと言えます。(私見!)
TYPE-Rはどんな人向けなのか?
TYPE-Rは、自転車コーチないしはプロシューマーをターゲットにした製品だと考えています。 つまりどういう事かと言うと、「TYPE-Rで収集したデータや、他の指標(対象者の身体的特徴、トレーニング状況、競技特性、speedやwatt、心拍、路面状況、等々…)、そして専門知識を有したコーチの経験値を統合した上で、分析・解析を行い、競技者のパフォーマンス向上を目指す」必要があるのではないかと。
もちろんこれはパワーメーターのそれでも同じ事が言えるのですが、少なくとも現時点ではこういった使い方がベストではないかなと。
データ活用の未来
今の所、知識を有したコーチとデータを共有しながらパフォーマンス向上を目指すのが良いのでは?と書きましたが、今後は例えば「マッサー」「カイロプラクティックドクター」「理学療法士」等とデータを共有し、違う角度からのパフォーマンス向上を目指せるのでは無いかと感じました。
こんなデータの見方ができるようになると嬉しい
以下は筆者からTYPE-Rへのフィードバックです(直接送れよ!って話しはあるけれど…)
- LegARの角度範囲の狭さが、ももが上がっていないから狭いのか、下がっていないから狭いのか(逆で広い場合どっちが寄与しているのか)がわかると嬉しい
- 過去データのセグメントを保存して比較できる機能が欲しい(同区間でのデータ推移を追っ掛けて時系列で見たい)
- 他人のデータを見れるフォーラムの様なものが欲しい(選手プロフィールとTYPE-Rのデータを見て自分と比較したい)